54歳のとき、ハローワークの職業訓練でWebを学びました。
日中は母の介護と通院。勉強したのは、夜から深夜だけです。
結論から書きます。
スキルは身につきました。でも、就職は決まりませんでした。
理由は年齢ではありません。順番を間違えたからです。
この記事では、半年間で実際に何をやったのか、54歳の私がついていけたのか、そしてなぜ就職できなかったのかを、隠さずに書きます。
いま在職中で「このままでいいのか」と迷っている方に、いちばん読んでほしい内容です。
職業訓練とは、何か
ハローワークが案内している、無料で職業スキルを学べる公的な制度です。
大きく分けて2種類あります。
| 種類 | 主な対象 |
|---|---|
| 公共職業訓練 | 雇用保険を受けられる人(失業手当を受給中の方など) |
| 求職者支援訓練 | 雇用保険を受けられない人 |
私が受けたのは、求職者支援訓練のほうです。
受講料は無料。教科書代もかかりませんでした。自己負担は通信費だけです。
さらに、条件を満たせば職業訓練受講給付金(月額10万円+通所手当)を受けられる場合があります。私の場合は雇用保険の受給資格があったため、そちらを延長する形になりました。
⚠ どちらに当てはまるか、給付が受けられるかは人によって違います。必ずハローワークで確認してください。
半年間で、実際に何を学んだか
私が受けたのは、Web制作とWebマーケティングを学ぶ、eラーニング型のコースでした。
数字で書きます。
| 項目 | 実際の数字 |
|---|---|
| 期間 | 6か月 |
| 総訓練時間 | 約490時間 |
| 1週間あたり | 約20時間 |
| 実施方法 | eラーニング+一部オンライン授業。通所なし |
| 定員 | 十数名 |
| 受講料 | 無料(教科書代0円) |
| 選考 | オンラインでの面接 |
学んだ科目と、その時間です。
| 科目 | 時間 |
|---|---|
| Webサイト制作の演習(HTML・CSSを含む) | 60 |
| Webサイトの改善企画書をつくる演習 | 60 |
| 集客のためのWebマーケティングの基本 | 40 |
| SEO・AIライティングの演習 | 40 |
| LP(ランディングページ)制作の演習 | 41 |
| バナー・画像・動画などの制作 | 41 |
| ポートフォリオ制作 | 40 |
| GA4を使ったアクセス解析と競合調査 | 20 |
| SNSコンテンツの制作 | 20 |
ほかに、ペルソナ設定、カスタマージャーニー、KPI設計、Webディレクション、そしてChatGPTなどの生成AIの使い方も入っていました。
任意で受けられる資格も用意されていました。GoogleのGA4認定資格(受験料無料)と、ウェブ解析士(受験料17,600円)です。
日中は介護。学習は、夜から深夜でした
ここが、他の体験記とたぶん一番ちがうところです。
私の1日は、こうでした。
- 日中 … 母の介護と、病院への付き添い
- 夜〜深夜 … 動画教材を見て、課題をやる
- 週1回 … 1時間のオンライン講義(時間帯は希望を出せる。ただし枠が埋まると空いている時間へ)
授業が固定の時間割ではなく、動画で自分のペースで進められる形式でした。これに助けられました。
はっきり言います。
通学だったら、無理でした。
介護をしながら、決まった時間に決まった場所へ通うことはできません。フルリモートで、ある程度は自分の裁量で進められたから、なんとかなりました。
ここで、いま在職中の方に伝えたいことがあります。
私は日中が介護で埋まっていました。あなたは、日中が仕事で埋まっています。
空いているのが夜しかない、という構造は同じです。
私は週20時間を、夜と深夜だけでこなしました。できないことではありません。
54歳の私は、ついていけたのか
正直に言うと、続けざるを得ない仕組みがありました。
募集要項に、こう書いてあります。
各ユニットごとの「習得度確認テスト」の正答率が、3回連続で8割未満になった場合、
または未受験のテストが4ユニット分に達した場合は、理由を問わず退校
つまり、なんとなく在籍し続けることができません。
厳しいと感じるかもしれません。でも私は、この仕組みがあったから逃げずに済んだと思っています。
そして私は、修了しました。54歳で、介護をしながら、夜だけで、8割を維持し続けたということです。
修了した時点で、一人でできるようになっていたこと
誇張せずに書きます。
- WordPressでサイトを作る(公開まで一人で)
- バナーや画像を作る(Photoshop・Illustrator・Canva)
- 生成AI(ChatGPT・Claude・Gemini)を仕事で使う
- ペルソナ設定
- カスタマージャーニーを描く
- Webサイトの改善提案と、提案書の作成
- バナーの改善提案と、提案書の作成
- LPの制作と、その設計に使うフレームワーク
- SNS運用
GA4(アクセス解析)も、課題で実際に使いました。Webサイトの改善提案の課題では、アナリティクスで数字を確認して、競合との違いを提案書にまとめています。
ただ、訓練で扱うのは基礎までです。 細かいところまで踏み込む内容ではありませんでした。ここは実務でやりながら覚えていくものだと感じています。
これは訓練が物足りないという話ではありません。半年で全部を実務レベルにするのは、そもそも無理です。むしろ、どこまでが訓練の範囲で、どこからが現場なのかを知っておくほうが役に立ちます。
そしてやってみて気づいたのは、私の強みはコードを書くことより、設計して提案することのほうにあるということでした。これは受けてみるまで分かりませんでした。
卒業した5日後に、母が亡くなりました
ここから先が、この記事でいちばん書きたかったことです。
訓練の終盤、母の容体が悪くなりました。ちょうど、求職活動が本格化する時期と重なっていました。
そして、こうなりました。
- カリキュラムのポートフォリオ制作(40時間)に、手が回らなかった
- 母の容態がどうなるか分からず、応募先を絞ることもできなかった
- 修了までのカリキュラムを終えるだけで、精一杯だった
修了して、5日後に母が亡くなりました。
四十九日が終わり、実家から元いた場所に戻りました。賃貸を新たに借り、家具をそろえ、生活を立て直しながら、求職活動をしていました。
その最中に、インターンの話をいただきました
生活の立て直しをしている最中に、訓練の関係先から「良かったらどうですか」と声をかけていただきました。
採用人数は限られていて、応募も多くありました。書類審査と面接を経て、採用されました。
2か月間、フルリモートで、AI関連の記事作成とSNS発信を担当しました。担当した投稿には、社内でも良い反応をいただけました。
生活が壊れている最中でも、選ばれることはできた。 これは書いておきたい事実です。
でも、就職は決まりませんでした
正直に書きます。
応募できたのは、5社です。
50社受けて落ちたのではありません。5社しか出せなかったのです。
理由は2つあります。
1つめ。職種にこだわりました。
事業会社の中で、自社のマーケティングをやりたいと思っていました。いわゆるインハウスマーケティングです。ところが、その求人は数が少ない。そして多くが実務経験を求めます。
応募できる求人が、そもそもほとんどありませんでした。
2つめ。ポートフォリオがありませんでした。
カリキュラムには40時間の枠があったのに、そこに母の容体悪化が重なりました。Webの仕事に応募するのに、作品を見せられない。これは大きなハンデでした。
理由は、年齢ではありませんでした
しばらく「年齢のせいだ」と思っていました。でも、並べてみると違いました。
母の死。四十九日。転居。生活の立て直し。
求職活動の一番大事な時期に、人生の都合が全部重なっていました。
その状態でも、応募多数のインターン選考は通っています。習得度テストも8割を維持して修了しています。
つまり、力がなかったわけではありません。時間と余白がなかったのです。
ここから言えることは、ひとつだけです。
在職中なら、勝負どころを自分で選べる。
辞めてからは、人生の都合が勝負どころに割り込んでくる。
根性論ではありません。順番の話です。
巻き戻せるなら、変える3つ
もし時間を戻せるなら、私はこうします。
1. 辞める前に学び始める
収入があるうちに動く。これが一番大きいです。収入があれば、選ぶ余裕が残ります。
2. 学びながら、作品を作る
私は「修了してからまとめて作ろう」と思っていました。それが失敗でした。課題を作るたびに、そのまま作品として残していけばよかったのです。
3. 副業から始める
いきなり就職を目指すのではなく、小さくても実際に仕事を受けて、実績を作る。そのほうが現実的でした。
在職中でも、学ぶ方法はあります
「職業訓練は失業した人のもの」——私もそう思っていました。でも、それだけではありませんでした。
私が受けた訓練の募集要項には、対象者の条件がこう書かれていました。
育児・介護中の者、居住地域に訓練実施機関がない者、在職中の者等、訓練の受講に当たり特に配慮を必要とする者
eラーニング型のコースは、通所が難しい人への配慮枠として設けられています。そこに「在職中の者」も入っていました。
ただし条件があります。自宅にパソコンとインターネット環境があり、キーボード操作ができること。 これは必須でした。
⚠ そして、誰でも受けられるわけではありません。 求職者支援訓練はもともと求職中の方向けの制度です。受けられるかどうかは必ずハローワークで確認してください。
在職中の方が使える制度は、ほかにもあります
1. 教育訓練給付金(厚生労働省)
厚生労働大臣が指定した講座を修了すると、費用の一部が戻ってきます。3種類あり、戻る割合が違います。
| 種類 | 戻る割合 |
|---|---|
| 一般教育訓練 | 20% |
| 特定一般教育訓練 | 40%(資格取得と就職で最大50%) |
| 専門実践教育訓練 | 50%(資格取得と就職で70%、賃金が上がると最大80%) |
必要な雇用保険の加入期間は、次のとおりです。初めて受け取る人には特例があります。
| 種類 | 必要な加入期間 |
|---|---|
| 一般/特定一般 | 原則3年以上(初めてなら1年以上) |
| 専門実践 | 原則3年以上(初めてなら2年以上) |
⚠ 受講開始日の前日から3年以内に教育訓練給付金を受け取っていると、支給されません。
在職中でも、離職後1年以内でも使えます。
2. 教育訓練休暇給付金(厚生労働省・2025年10月創設)
会社を辞めずに、連続30日以上の無給休暇を取って学ぶ人向けの制度です。失業手当に相当する額が支給されます。
条件は厳しめです。
- 休暇開始前の2年間に12か月以上の雇用保険加入
- 休暇開始前に5年以上の加入期間
- 会社の就業規則などに、教育訓練休暇の制度が明記されていること
- 会社の承認が必要(業務命令ではなく、自分から申請するもの)
3. リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)
こちらは厚労省ではなく経済産業省の事業です。
- 受講費用(税別)の2分の1(上限40万円)
- 転職して1年働き続けると、さらに5分の1(上限16万円)
- 合わせて最大56万円
対象は「雇用契約がある在職者で、転職(雇用主が変わること)を目指している人」です。
⚠ ここは誤解しやすいので、はっきり書きます。このお金は、自分に振り込まれるわけではありません。
公式にこう書かれています。
本補助事業の直接的な補助対象は個人の方ではありません
補助は講座を提供する事業者に出ます。受講者は、その分だけ安い金額で受けられるという仕組みです。教育訓練給付金(自分が払って、あとから自分に戻る)とは、お金の流れが違います。
正直に書きます
「在職中でも給付金で学べます」とだけ言うのは、不誠実だと思っています。使えない条件のほうが多いからです。
- 教育訓練休暇給付金は、会社の就業規則に制度がなければ使えません。 中小企業では制度自体がない会社が多いはずです
- リスキリング支援事業は、転職が前提です。社内での昇進、独立、フリーランスへの転向は対象外。いま無職の方も対象外です
- 教育訓練給付金は、講座が厚生労働大臣の指定を受けていないと1円も出ません
つまり——「自分が使えるかどうか」を先に調べないと、話が始まりません。
給付の割合や条件は年度で変わります。必ず公式で確認してください。
- 教育訓練給付金(ハローワークインターネットサービス)
- 教育訓練給付制度 検索システム(厚生労働省) — 指定講座を検索できます
- 教育訓練休暇給付金(厚生労働省)
- リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業(経済産業省)
※ この記事の制度に関する記述は、2026年8月に上記の公式ページで確認しています。制度は変わります。申し込む前に、必ずご自身で最新の情報をご確認ください。
よくある質問
50代でも職業訓練に受かりますか?
受かります。私は54歳で合格しました。
ただし選考はあります。私のときは競争率2倍で、書類審査と面接がありました。定員は十数名です。必ず入れるわけではありません。
パソコンが苦手でもついていけますか?
私は「難しそうだ」と思っていました。そもそも何をやるのかも、よく分かっていませんでした。
終わってみての感想は、これです。
意外とできるもんだな。思っていたより、難しくなかった。
簡単だったとは言いません。覚えることは多かったです。でも、入る前に想像していた「難しさ」は、ほとんどが思い込みでした。
ただし、ファイルの操作やZoomの接続くらいは、事前にできるようにしておいたほうが楽です。
働きながら職業訓練は受けられますか?
eラーニング型のコースなら、対象条件に「在職中の者」が含まれる場合があります。
ただし前述のとおり、求職者支援訓練はもともと求職中の方向けの制度です。ハローワークで必ず確認してください。
「働きながら学びたい」だけが目的なら、教育訓練給付金の対象講座を探すほうが現実的かもしれません。指定講座は厚生労働省の検索システムで調べられます。
職業訓練と給付金は、何が違うのですか?
いちばん混乱しやすいところです。お金がどう動くかで分けると、すっきりします。
| 制度(主な対象) | お金がどう動くか |
|---|---|
| 求職者支援訓練 (主に離職中) |
受講料がはじめから無料 |
| 職業訓練受講給付金 (訓練を受ける人) |
訓練中の生活費が出る |
| 教育訓練給付金 (在職中もOK) |
払った費用があとから一部戻る |
| 教育訓練休暇給付金 (在職中・休暇制度が必要) |
休暇中の生活費が出る |
| リスキリング支援事業 (在職中で転職希望) |
講座が安く受けられる(本人には振り込まれない) |
| 人材開発支援助成金 (★申請するのは会社) |
会社にお金が入る |
⚠ 最後の「人材開発支援助成金」だけ、申請するのは会社です。ほかの5つは本人が申請します。
ざっくり言うと、職業訓練は「タダで受けられる」、給付金は「払ったお金が戻る」です。
この違いだけでも、探し方がまったく変わります。別の記事で、もう少し詳しく書く予定です。
職業訓練を受ければ就職できますか?
約束はできません。私は決まりませんでした。
私の場合は、職種にこだわったこと、ポートフォリオが作れなかったこと、そして家族のことが重なったからです。
ただ、受けたことを後悔はしていません。 スキルは残りましたし、インターンにもつながりました。
「受ければ就職できる」ではなく、「受けたあと、どう動けるか」で決まります。 そして、その「動ける時間」があるかどうかが、いちばん大きいのです。
まとめ
- 職業訓練は、受けてよかったと思っています。スキルも自信も残りました
- 54歳でも、介護をしながらでも、夜だけで週20時間をこなせました
- 失敗したのは能力ではなく、順番でした
- 在職中なら、勝負どころを自分で選べます
いま会社に勤めていて「このままでいいのか」と思っている方へ。
辞めてからではなく、いまのうちに動いてください。
いきなり大きな決断をする必要はありません。私も、最初にやったのは無料の説明会に参加してみることだけでした。
私がなぜ54歳で学び直すことになったのかは、こちらに書いています。
「職業訓練はやめとけ」と言われる理由を、ひとつずつ検証した記事もあります。
▶ 「職業訓練はやめとけ」を、54歳で実際に受けた私が検証します
これから、こんなことも書いていきます。
- 教育訓練給付金の使い方(在職中でも使えます)
- スクールの無料説明会に出てみた記録
- 40代・50代からの副業で、実際にやってみたこと
「条件が厳しくて自分は無理だ」と思っている方へ。その「条件」は給付金の話かもしれません。
▶ 「求職者支援訓練は条件が厳しい」のは給付金の話。失業手当をもらいながら受けました
※紹介するのは、自分で使ったもの・調べたものだけにします。


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